「日本のサブカルチャーへの逆輸入とその理由」、映画「めめめのくらげ」(村上 隆 監督)

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めめめのくらげ   映画パンフレット 監督 村上隆 声 出演末岡拓人、浅見姫香、窪田正孝、染谷将太、黒沢あすか、津田寛治、鶴田真由、斎藤工
日本のサブカルチャーを西洋のアートシーンのコンテクストに翻訳することで、世界的なアーティストとなった村上隆氏の初監督映画。本作品は、今まで村上氏が意識してきた受容者、つまり現代アートのコレクターに向けたものというより、一般的な日本の子どもたちに向けて制作されたものだ。今後もシリーズ化されていく予定のようで本作はその一作目となる。

初作ということもあり世界観の設定が主な内容となっていた。おそらくは3.11の被害にあって引っ越してきた小学生の男の子が主人公で、津波で父親を亡くしている。その主人公が不思議な生き物に出会い仲良くなっていく。転校先の学校では他の子どもたちも同様の生き物を連れており、子どもたちはそれらを「ふれんど」と呼んでいる。そして、その「ふれんど」の謎が学校の外にある施設にあることがわかってくる。その施設には世界を破壊へと導く組織(というか4人の中二病的な人びと)が関わっており、子どもたちはその「ふれんど」とともにその危機に巻き込まれ、そして立ち向かっていく。

本作品の中では様々なモチーフが散りばめられている。震災後、悪の組織、転校生、新興宗教、オタク視線の女の子、デジタルとアナログの融合、ちーかま、特撮、デバイス。連作を前提にしているからでもあるだろうが、それぞれのモチーフはテーマとして深まることもなくフラットな形で作品内に配置されている。いうなれば、複数の島宇宙を1つの作品内に閉じ込めた、という印象だ。そのような世界の中で、子どもたちは「ふれんど」(村上隆氏の経営する会社・カイカイキキでデザインされたキャラクターたち)と共に暮しているのだ。

この映画によって、僕は村上氏の考える方向性みたいなものを空想することができた。現代アートのコンテクストではもう充分に認められておりこれから更なる拡大を考えるならば、やはりキャラクター商法への発展という方向性が意識されているではないだろうか。この映画の中でみられる子どもたちとキャラクターたちが仲良く暮らしているようなイメージは、もうすでに「ポケモン」などの成功によって受け入れられやすい土壌が出来上がっている。その文脈の中でカイカイキキの作り上げてきたキャラクターを馴染ませていくこと。それはいうなれば、憑依する文脈を現代アートから日本のサブカルチャーに移し替えたという感じだ。

それは「逆輸入」のようにもみえる。日本のサブカルチャーの作り手/消費者からは村上氏は批判の対象でもあった。サブカルチャーの消費と生産、そしてコミュニケーションの現場からモチーフを一端引きはがし再構成し、西洋アートのコンテクストに配置するということを行ってきたからだ。けれども、そのコンテクストによって培われてきた技術やノウハウを利用して、今度は日本内部での活動を本格的に開始したともいえるのではないだろうか。

あと、現在の日本のコンテンツ産業においては、ゲーム化への展開は容易に想像できる。もちろん、ブランディングなどの問題もあるだろうし容易なことではないと思うけれども、ソーシャルゲーム「めめめのくらげ」の落ちものパズルRPGとかで出来たら面白そう。もしかしたら、そのようなマルチメディア化によって、カイカイキキのキャラクターが日本に溢れる時代が来るのかもしれない。

ただ僕が観た印象としては、本作は映画よりもテレビやネットなどの方が適性の方が高いのかなと思ったところもある。例えば、30分か1時間くらいの連作を中心として、お祭り的に映画版を作るとか。そういう流れもあったはずだ。それにキャラクター映画としてウェルメイドな作品にするのなら、プロの監督に頼んだ方が良いと思われる。その辺に映画というメディアを選択した理由やこだわりの在処があるのかもしれない。もしかしたら、他の業界に活動を展開するにあたり、比較的近接している映画業界を選択したのかもしれない。その辺はよく分からない。ただ、村上氏のいい意味でのカルトさも良く出ていて好印象を持ったことは確かだ。

世界のアート史に残る作品を作ること。それが村上氏の目標の大きな目標であった。そしてそれはもはや実現した感もある。そして、同時にもう1つの目標があった。それは日本における「教育」の問題だ。本作はGEISAIに続く「教育」の文脈の中でも位置づけることもできるという。その活動の主戦場を「サブカルチャー」に移行した、ともいえるのであろう。

(了)

 

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ観察。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com

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