「浮上するグローバル文明における二つの未来像とその選択」、『サイファーパンク』(ジュリアン・アサンジ 著)

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サイファーパンク インターネットの自由と未来

本書は、ウィキリークスの編集長であるジュリアン・アサンジ氏をはじめとする思想家、活動家の3人による座談会をまとめたものだ。テーマは今後のインターネットにおける自由について。

民主主義の未来に寄与するものと思われていたインターネットという情報技術は、現在、人類史上最も危険な全体主義の尖兵へと変化しつつある。これが本書で示されている現状認識。タイトルにもなっている「サイファーパンク」とは、一般市民が強力な暗号を利用することによって、国家による検閲から個々人のプライバシーや匿名性を確保し、国家が個人に及ぼす監視やコントロールを抑制した自由でオープンな社会を目指す思想のことをいう。

本書では、私たちの進むグローバル文明の行き先について、2つの可能性が示されている。

①強者に透明性を、それ以外の者にプライバシーを促進する未来

②わけのわからない謀報機関とその一味である多国籍企業の複合体にあらゆる人々を支配する力を明け渡す未来

サイファーパンクが目指す未来とは、①ということになる。

もしかしたら、読者はこのような危機意識を過剰なもののように感じるかもしれない。しかし、その変化の最前線を闘ってきた彼らにとって、その認識はとても具体的な現実なのだ。彼らはその危険性を間近で体験してきた。だからこそ、本書はマニフェストではなく警告の書なのである。

座談会の中で、国家システムが監視体制を強化する上で鍵となる「情報黙示録の四騎士」と呼ばれるものに言及されている。それは以下の4つだ。

1.テロリズム

2.マネーロンダリング

3.麻薬戦争

4.児童ポルノ

もちろんこれらは犯罪であり取締る必要性があるものだが、その監視体制を強化していく背後に、様々な情報を収集・蓄積・支配する権力を拡大しつつある「強者」が存在しているという。その告発と闘争こそがこれからの民主主義社会での重要な活動になってくる、というのが本書の趣旨となろう。

組織は権益の自己拡大を目指すものだ。国家というシステムもまたその例外ではない。だからこそ、例えば立憲主義という法的な仕組みによって民主主義社会を構築している。システム運用者へのアクセスや監視が存在しなければ、その権益は秘密裏に肥大化し、結果、市民社会に害をなす可能性すらある。国家システムとそこに住む人々の利害は、単純にイコールで結べるものではなく役割が異なる。

「弱者にプライバシーを、権力には透明性を」。

このサイファーパンクの合言葉の重要性を、もう一度、私たちは考えなくてはならないのではないだろうか。

現在、アサンジ氏はオーストラリアで9月以降に行われる予定の上院議員選挙に出馬することを明らかしている。

(了)

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
表象・メディア論、及びコミュニティ観察。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com

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