「新しい保守層から未来の姿を予測する」、『ヤンキー経済』(原田曜平 著)

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ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)

「マイルドヤンキー」の経済活動

著者の原田曜平さんは博報堂ブランドデザイン若者研究所のリーダーで、若者の消費行動やライフスタイルの研究とマーケティングを行っている方。本書はその若者研究の成果のひとつだ。

本書では、これからの日本経済において重要になると予想されるある層のライフスタイルや消費傾向が紹介されている。それは「マイルドヤンキー」と呼ばれる層である。

「マイルドヤンキー」とは、「上京志向がなく、地元で強固な人間関係と生活基盤を構築し、地元から出たがらない若者たち」のこと。この層は、地縁を大切にする保守的な意識を持っており、「新保守層」と呼ぶこともできるとされる。

「マイルドヤンキー」の上昇志向のなさと、「いま、ここで築いている生活に対する高い満足度」は、密接に結びついている。そのため、彼らが望む消費は、かつてのヤンキーたちのように「今の自分を変革し、高いステージに上るための消費」ではない。そこにあるのは「現状維持を続けるための消費」なのだ。

若者が消費しなくなったと言われるなかで、この「マイルドヤンキー」たちは「優良な若年消費者」である。そして、日本経済の未来は彼らが牽引していくのではないか、というのが本書の要旨となっている。

消費傾向から見えてくる未来像

これからの経済活動を担う可能性のある層の研究は、その社会の未来の姿を予測することでもあるのではないだろうか。なぜならば、その層のライフスタイルに合わせる形で、商品やサービスが量産されることが見込まれるからだ。

確かに、現在進行で形成されつつある若者の層は、この「マイルドヤンキー」たちだけではない。けれども、比較的旺盛な消費意欲を伴うその経済活動によって、大きな社会的なシェアを持つようになる可能性がある存在なのだ。そして、その社会への影響力は、おそらく無視できないものになるだろう。

例えば、消費行動をあまりしない若者の象徴的な本として、『ニートの歩き方』(pha 著)を挙げることができる。だが、この本で紹介されているのは、ネットや都市をひとつの自然の生態系として捉え、その幸を享受して緩やかに生活していくライフスタイルである。「マイルドヤンキー」たちに比べ、この「ニート」的な層の消費意欲は低い。なぜならばこの「ニート」的な層は、消費するというよりも、お金を使用せずに、今あるものを利用し組み合わせることによって、新たな価値を創り出すことに意味を見出す傾向が強いからだ。

しかし、本書で扱われている「マイルドヤンキー」たちは、「ニート」的な人たちよりも比較的強い消費意欲を持っている。そのため、経済を回すという意味では、これから大きな存在感を持つだろう。さらにこの層は、ライフモデルとして、保守的でスタンダードなものを持っているということも重要である。つまり、結婚して子どもを産み育てるなど、次世代をスムーズに生み出すことがナチュラルにできる層なのだ。そのことによって、サスティナブルかつ更なる消費行動の動機が生まれてくる。

この比較的旺盛な消費意欲と次世代へとつなげるサスティナブルさによって、この「マイルドヤンキー」たちはこれからの日本社会において重要な位置を獲得するのではないか。そうであるのならば、この層の理解はマーケッターのみならず、多くの人たちにとって必要になってくるはずである。

本書は、その理解のための入門書としても有効だろう。

他の議論との接続可能性

また、『フード左翼とフード右翼』(速水健朗 著)における「フード右翼」と「マイルドヤンキー」の層は、おそらく被っているのではないかと思われる。そうであるのなら、「マイルドヤンキー」の対義語は「マイルドリベラル」、ということになるのかもしれない。

そう仮定すると、現在行われている様々な議論との接点も発見できる。例えば、「新しいリベラル層の構築」や「地方での豊かな生活」などの問題系。それらの議論の中にも、本書を位置付けることが可能なのではないだろうか。

ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体 (幻冬舎新書)
原田 曜平
幻冬舎
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(了)

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
表象・メディア論、及びコミュニティ観察。インディーズメディア「未来回路」。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com

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