劇評「演劇の遺伝子を探す旅の途中」、『機劇 〜「記述」された物から出来事をおこす〜 Aプログラム 身体・譜面』(構成・作・演出:篠田千明)

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A.説明

2012年に劇団「快快」を脱退し、タイのバンコクで暮らしている演出家・作家の篠田千明さんの本格的なソロ活動の第一弾。2015年発表予定の演劇に向けたプロジェクトという位置づけの公演。

[機劇 とは]

身体と空間を媒介に出来事をつくり、人が集い、対話する機会である瞬間芸術・演劇が、時を越えて残されるための物:出来事を「記述」する身体/譜面/絵/テキストから、演劇とはなにか? を考える試み。今回は2回に分けたショーイングを行う。
(『機劇〜「記述」された物から出来事をおこす〜』公演情報 http://shinodachiharu.com/kigeki_outline/

今回は本プロジェクトにおける4つのパート(身体/譜面/絵/テキスト)のうち2つ(身体/譜面)がプログラムAとして上演された。

1.「The Short Chatri / タイトルコール[身体]」
何年も国にIDカードを申請していたタイのホームレスのおじさんが、やっとそれを取得できて、そのことに対して神様に御礼をしたいということで、役者の中林舞さんがそのおじさんに頼まれて神様に奉納した踊りの習得とその披露を演出・圧縮した作品。この踊りは、150年くらい前からタイの特定のエリアで受け継がれている伝統芸能“ラコーン・チャートリー”という「猫の踊り」だという。

2.「ダンススコアからおこしてみる[譜面]」
50年くらい前にアメリカで書かれたアンナ・ハルプリンの「THE FIVE LEGGED STOOL」のコンポジションを役者の福留麻里さんがソロで演じる。ダンススコアにある数人の役をひとつひとつ演じていき、別の時間軸の映像が舞台上にあるディスプレイに重ねられて1つの舞台を形成していく。その生成過程を演劇作品にしている。

B.感想

とてもストイックな印象を受ける公演だった。例えるならば、学問のおける基礎文献の読み込み、あるいは、スポーツにおける筋力トレーニングのようなものを観たという印象だ。だから、ここにある問いに対して関心のない観客にとっては、けっこう忍耐力を要する作品だったのではないだろうか。言ってみれば、研究室での実験の様子を観ているようなものだからだ。ただ、その実験の内容はとても興味深いものだった。

「記述されたものから出来事をおこす」ということは、演劇という行為そのものでありながら、あまり作品のテーマとして設定されないものなのではないだろうか。このテーマの設定は、公演の後に篠田さん自身が語っていたのだが、岸田國士戯曲賞が獲得できなかったことに起因しているという。このことによって「演劇にとって戯曲とは何か」という問いに切実さが生まれたと推測することができるだろう。

その切実さは、演劇と戯曲の関係という作品の根源へと作家を誘っていく。さらに、そこにあるテーマの抽象度を上げていくと、人間における物理空間と情報空間の関係や、ミームの世代を越えた継承への問いとしても捉えることが出来るかもしれない。そうなってくると、演劇と戯曲の関係という根源を掘り下げながらも、そこに現れてくるのは一般的な演劇という範疇を楽々と越えていくものになってくる。

今日的なものとして、時代と同期したもののように思われたのは2つめのパートだった。一人の役者が複数の役を演じ映像に重ねていく様子と、YouTubeやニコニコ動画などで観られる複数の楽器を一人で演奏し重ねていくことで制作される動画が重なってみえたのだ。

同期、非同期、擬似同期。これらを演劇の問題系に引き込む試みは興味深い。なぜなら、現在、様々なものが疑似同期して並列に配置され歴史の時系列が曖昧になっている中で、この作品は「イマココ」の身体性に批評的に介入しているようにみえたからだ。この点において、普遍性だけでなく、現在性という点でも関連性を見出すことができる。

疑似同期に利用した演奏の動画は、例えばこういうのとかですね。

8月にはBプログラムも予定されている。これらの実験が来年上演予定の篠田さんの作品において、どのような関係を結び影響をもたらすのか楽しみだ。問いを深めていくことで、演劇を使用しながら演劇の存在を支えているミームを見つけるのだろうか。もしそれを見つけることができたなら、それをどのように活用していくのだろう。例えば、portBの高山明さんは演劇の起源を「観客席」に見出しそれを拡張する試みを行っているわけだが、篠田さんにはそれと違った形での演劇を拡張する試みを期待してみたい。もちろん、これは私の勝手な希望にしかすぎないのだけれども、「快快」時代からの一観客として今回の公演を見た後に、そのような希望を持つに至った次第である。なんかすごい鉱脈掘ってる感ありましたよ。

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[Aプログラム:身体/譜面]

・The Short Chatri / タイトルコール [身体]
出演:中林舞
映像:いしいこうた、小道具:危口統之(悪魔のしるし)

・ダンススコアからおこしてみる [譜面]
出演:福留麻里

日時:
7 月 11 日(金) 20:00
7 月 12 日(土) 14:00 / 19:00
7 月 13 日(日) 13:00 ★/ 18:00

会場:SNAC(清澄白河)
〒135-0022 東京都江東区三好 2-12-6-1F
東京メトロ半蔵門線、都営大江戸線「清澄白河駅」B2 出口より徒歩 2 分、A3 出口より徒歩 4 分
SNACウェブサイト(http://snac.in/

[Bプログラム:絵/テキスト]

・デッサン会 [絵]
モデル:辻村優子
※お客さま自身にデッサンを行っていただきます

・演劇 [テキスト]
出演:齋藤桂太(渋家)

日時:
8 月 8 日(金) 20:00
8 月 9 日(土) 14:00 / 19:00
8 月 10 日(日) 13:00 / 18:00
※受付開始は開演の 30 分前、開場は 15 分前

会場:森下スタジオ
〒135-0004 東京都江東区森下3‐5‐6
地下鉄都営新宿線、 都営大江戸線「森下駅」 A6 出口より徒歩 5 分
東京メトロ半蔵門線、 都営大江戸線「清澄白河駅」 A2 出口より徒歩 10 分
森下スタジオウェブサイト(http://www.saison.or.jp/studio/

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(了)

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
表象・メディア論、及びコミュニティ観察。インディーズメディア「未来回路」。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com

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