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この記事の所要時間: 443

ヘルタースケルター (Feelコミックス)

 私自身とにかく「ゼロ世代」の文化というものが苦手で(特にゼロ世代の小説、現代アートなんかは如実に嫌悪感を感じる体質。作品に寄りますが)、なんで苦手かというととにかく理屈が先行している感じがして、「過去にこういう作品があって、だから俺たちはあえてこれをやっている訳で、でも過去の◯◯の理屈は因襲しながら手段としては取り入れつつそれらを超えた現代ならではの感覚をなんちゃらかんちゃら」ってなんだか屁理屈こねてるだけで自分自身の芸がないように感じてしまうから。小説・芸術・音楽・映画・演劇、全てにおいてですが、こういう現代文化に対する苦手意識を感じてしまう作品は、とにかく生理的な拒否反応が出て体がむず痒くなる体質なのです。

 そんな私の自分語りはどうでもいいんですが、何が言いたいかっていうとそんなひねくれた私でも、映画「へルタースケルター」は、純粋にすっごく面白かったです。この映画はいいなって純粋に思えた。

 完璧な美しさを求めて全身整形したリリコが、少しずつ壊れていく・・・肉体的にも精神的にも、周りの人間を巻沿いにして周りも自分も環境も肉体も全部が崩壊していく。基本的に「崩壊」を描いている映画だと思うのですが、崩壊の仕方の描写が結構グロテスクなのに、すごくリアルだと思いました。そしてグロテスクでリアルなのに一貫した美意識が存在している。この映画長く感じるっていう人もけっこう居るみたいですが、私はとにかく夢中になっていたので、どうなるの?どうなるの??ってドキドキして、ドキドキしてたらエッ!って終わった。

 沢尻エリカが演じる全身整形したリリコは劇中とにかく美しい、可愛い、女でも(女だから?)うっとり見とれてしまう、、そんなリリコがどんどん壊れていく。最初はまあこうなるかっていう壊れ方ですが、更にどんどんどんどん壊れていくので、え、そこまでやっちゃうの?え?え?これ以上壊れたら人間って?どうなるの?やっぱ死ぬの?人格崩壊?悲劇エンド?どうやってこの崩壊のストーリーを収拾して終わらせるのか、最後まで目が離せない。

 リリコのやっていることは全身整形というところからぶっ飛んでいますが、リリコを見ていると女性なら誰でも共感というか、何かしら似たようなものを感じると思います。だって誰だって女ならできれば美しく、可愛くありたいし、素敵な男性に好かれたりちやほやされたら嬉しいだろうし、素敵な男性に抱かれたら気持ちいいだろうし、もし自分が世界のトップになれたら、世界一の美女になれたら!なんて、そこまで思わなくても、普通にそんな女になれたら気分良くないですか?それら全部を叶えちゃった人がリリコで、でもそれがやっぱり一瞬のもので虚構にすぎなくて、結局部手に入れたのに何も残らなかったのがリリコで、そういう姿がリアルで、私はぐっと感情移入できました。

 映画を観終わった後に漫画の原作を読んだのですが、漫画より映画のほうが圧倒的に美意識が高いと思いました。主に監督の蜷川実花の才能だと思います。世界のトップにいるリリコはもううっとりするくらい素敵、壊れていってどんどん狂っていくリリコも不思議に美しい、ボロボロになって泣き叫ぶリリコだってキレイ(屋上で私なんて要らないと言って泣き叫ぶシーンは演技以上のもの、沢尻エリカの本質のようなものを感じました。発狂して叫び散らすシーンも同様の感想)。

 「自分で決めて、自分で壊す」。最初から最後まで、自分の人生は自分で選択して、自分で決める、その一貫した意思の強さ。強い意思を持った人間の美しさ。

 この映画の素晴らしさは、スキャンダラスな経験を経た今の沢尻エリカの女優としての実力・魅力、原作の岡崎京子の強いメッセージ性、監督の蜷川実花の映像美に関して妥協しない信念と才能だと思います。この三人の才能がバラバラにならずに一体となって完成した、ある種の奇跡が起こっているように感じました。(バンドで言ったらバンドマジックのようなものだと思う)

 と、熱弁しましたが、私がとくにかくこの映画の一番素晴らしいところは、ラストだと思う。もうリリコ終わりなの?ここまで来たら普通ならバッドエンドで虚しい結果になるのがまあ妥当なんじゃないか、でも、もしかしたらなんかあるの?、、、もっと、悲劇じゃなくて、違うオチが。でもそれって何だ、検討もつかない。

 最後の最後、スカッッ!!としました。爽快!ハッ!いける!全然人間壊れきってもいける!壊れちゃったらもう最後惨めになるか死ぬしかない、なんてことはない。大丈夫だ!幾ら壊れたって。リリコみたいに勇気があれば。

 って私は勇気づけられたような気がして、清々しく前向きな気持ちで映画館を出ました。私自身、今までの人生全部自分で決めてやってきたつもりで、これからだって「自分で決める」。なんにでもなれる。そんな気持ち。帰り道の足取りは軽く、いつもより少し、凛々しく。

【エリ・コヤマダ】
 青山学院大学文学部心理学科卒。セツ・モードセミナー研究科卒。現在は某通信社にて地道にお仕事させてもらっています。
 カウンセラーを目指したり、恋愛活動に明け暮れたり、インドに行ったり、NYに行ったり、絵を描いたり、画家やイラストレーターに憧れたり、バンドをやったり、音楽業界に入ってみたり、いろんなことに手出しすぎたけど、今は平和に暮らせそうです。
 絵を描くこと、お酒を飲みにいくこと、好きな音楽を聴きにいくこと、夜遊び、本を読むこと、洋服を買うこと、お笑いや映画を見ることが目下の日々の楽しみ。素敵になりたい。http://ericoyamada.pupu.jp

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