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この記事の所要時間: 313

 本書は、現在におけるコミュニティデザインの5W1H(「なぜ」「いつから」「誰と」「何を」「どこで」「どのように」)を記したものである。

 その中で、日本における住民同士の「つながり」というものが、歴史的にどのような変遷をたどってきたかが描かれている。

 例えば、以下のように。

 もともと、日本の農村集落は「つながり」が強い場所だった。江戸時代の年貢は組頭に対して定められ、組頭は自分の組に所属する人たちから一定の米を集める必要があり、そのため協同作業が多く発生し、地域コミュニティの結びつきが強固になっていた。
 けれども、明治以降、年貢制度が廃止され、税金が個人へと課せられるようになる。個人は国に税金さえ納めれば隣人とつながる必要性がなくなり、さらに工業化によっても協同作業はさらに少なくなっていく。

 その結果、住民の「お客さん化」が進んでいくことになる。つまり、地域のことは行政任せ、というふうになっていくのだ。
 そのような近代制度においても多くの税収が可能だった時代は良かったが、今後、行政の財政状況は厳しくなっていくことが予測されている。よって、今後さらに必要になってくるであろうコミュニティの形成に関しても、あまり行政には期待することができないだろう。だからこそ、コミュニティデザインは住民が自ら行っていく必要が生まれてくるのだ。

 現在、日本では少子高齢化が進んで人口の減少が進行中だが、本書ではその状況に対しても肯定していこうという態度が見て取れる。それを示す一例として、日本が海外からそれほど多くの物資を輸入していなかった時期に国内で生活できた3500万人という数が、日本の人口の適正ではないかとする説を肯定的に挙げているところにも現れている。この100年間、日本全体の人口は3倍になったのだ。むしろ、現状の方が特殊な状態であるのではないか、と。
 また、そのように定住人口が減少するの中でも「活動人口」を増やすことは可能なのではないか、ともいっている。

 そのような流れの中で、著者の山崎さんは「現在」という時代を捉え、コミュニティデザインというものを考え実践しているのだ。

 山崎さんによると、日本におけるコミュニティデザインは、おおまかに分けると、3種類に分類される。

①建築物などのハード整備によってコミュニティを生み出そうとするもの。日本では、1960年代から盛んに行われるようになった。

②建築物などのデザインにコミュニティの意見を反映させるもの。1980年代から盛んになった。

③建築物などのハード整備を前提とせず、地域に住む人や地域で活動する人たちが緩やかにつながり、自分たちが抱える課題を乗り越えていくことを手伝うもの。2000年以降に多く見られるようになった取り組み。

 そして、この③のコミュニティデザインがこれからもっと必要となるだろうとし、これが著者の仕事ということになるのだろう。

 時代の変化に応じたサスティナブルなコミュニティを地域に根付かせるにはどうしていけば良いのか。そこで、ヨソモノの視点が重要な役割を果たすのかもしれない。何故なら、部外者だからこそ受け入れられる言葉というものがあるからだ、と山崎さんはいう。

 現在心配されている日本の地方の状況は、今後、より深刻化していくことが予想される。けれども、時代の変化をダイレクトに受ける場所であるからこそ、新しいモデルが生まれる可能性も、ゼロではないのではないのかもしれない。

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ研究。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com

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