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 「働き方」の未来についての本だ。

 著者のリンダ・グラットンさんは、経営組織論の世界的権威で、「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞されたりもしている人。

 本書は、いま起きつつある変化は景気の後退だけで説明がつくものではなく、途方もなく大きな規模の創造的・革新的変化のプロセスが本格的に始まろうとしているのだ、という前提からはじまっている。

 その大規模な変化を突き動かすのは、次に挙げる5つの要因による複雑な相乗効果だという。

①テクノロジーの進化

②グローバル化の進展

③人口構成の変化と長寿化

④社会の変化

⑤エネルギー・環境問題の深刻化

 そして、このような変化に対応するために、以下の3つのシフトが提案される。

①「ゼネラリスト」から「連続スペシャリスト」へ
→職業人生を通じて、自分が興味をいだける分野で高度な専門知識と技能を習得し続けること。

②「孤独な競争」から「協力して起こすイノベーション」へ
→友人関係や人脈などの形で人間関係資本をはぐくむこと。

③「大量消費」から「質の高い経験」へ
→所得と消費を中核とする働き方から、創造性と質の高い経験を大切にする働き方に転換。

 このシフトの特徴をみていると、いわゆる「ノマドな界隈」との親和性も見て取れるのではないだろうか。「コ・ワーキング」とかコンセプト型の「シェアハウス」とか、これらのシフトの条件にかなうものであるようにも見える。

 ブームというものは様々の層を巻き込むもので、それによって勢いがつくという側面もある。だから、目立つ部分においてだけそれを批判してもあまり意味がない。そのようなムーブメントが起こっている理由を探して、それが一過性のものなのかそうでないのか見定めることが必要だ。

 未来予測からの演繹して導かれたものを実践していくこと。

 実際、未来を完全に予測することは誰にもできない。ある未来像への対処、それは未来に対する賭けであり、また、リスクヘッジでもあるのではないだろうか。そうであるならば、様々な批判に関しても自らの中に取り込み糧にしていく必要もあるだろう。

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ研究。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com