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この記事の所要時間: 153

僕たちのゲーム史 (星海社新書)

 本書は、最大限に個人的な情動を抑えて語られているが故に、余計にアツい内容となっている。

 ここでのゲームの定義は「ボタンを押すと反応すること」、それのみである。そのように定義した理由は、本書を読み進める中で明らかになっていく。

 やはり、ゲームで育った意識を多少なりとも持っている人間としては、どうしても自分の体験と照らし合わせがちだ。しかし、著者が設定した「変わらないもの→ボタンを押すと反応すること」、「変わっていくもの→物語の扱い方」という軸のおかげで、ゲーム体験が個人史に留まることなく、文化・社会史としての強度を獲得することに成功している。

 特に「裏技ブーム」と「音ゲー」に扱い方は、自分の中にある個人的なゲーム史を更新することになった。

 「裏技ブーム」。この懐かしい言葉だけで胸がときめくが、僕はこれがどのような構造の中で成立している現象なのかを意識したことがなかった。個人的な経験とそこにあるもっと大きな構造が重なり合っていく感覚は、とてもエキサイティングなものだ。
 「音ゲー」は「ポケモン」と同じく社交的なゲームとして外向き志向のジャンルであるということ。その観点から考えると、今まで持っていた「音ゲー」に対する違和感がスッと説明がついた。

 このゲームを巡る約30年の歴史は、様々なメルクマールを記述しながら、ゲームが現実世界に寄り添い、そして融合していく形を迎えるところで締めくくられている。若い読者の中には、この時点で実感を持つに到る人もいるかもしれない。

 本書は、著者と同世代で、話の端々に昔ハマったゲームの小ネタを挟むような人にとって、必読の書であろう。
 また、全編がゲームに対する愛情に溢れていると同時に、ゲームに関心がある人以外にも届く射程も備えている。よって、最近ゲームという存在が気になり出したという人にとっても、充分にその好奇心に応えてくれる本であろう。

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ研究。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com

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