Share on Facebook
LINEで送る
Pocket

この記事の所要時間: 224

1.「芸術家」に必要なこと

 創造の現場を立ち上げるための基礎を、如何にして作り上げていくかについての本だ。そのために、芸術家としての心構えや組織の在り方が示されている。

 著者の村上隆さんは、自らが活動するフィールドを「現代美術」と設定し、その業界の中で、如何に生き残っていくかを戦略的に考え、実践してこられた方だ。

 「現代美術」の世界で如何にして「成功」するのか。「成功」するとは何か。本書において、芸術家とは「覚悟と肉体を資本としたアスリート」である、としている。

 

2.「成功」のかたち

 本書では、成功の6つのパターンが挙げられている。

1.天才型
2.天然型(超越型)
3.努力型
4.戦略型
5.偶然型
6.死後型

 村上さんは自身を、〈「努力型」+「戦略型」〉であると分析していて、最終的には「死後型」になることが目標だとしている。そして、ここでの成功とは、「歴史に残る作品を造りあげること」、この一点のみ。

 その歴史というのは、米国や欧州の伝統とマーケットに基づくアートシーンのコンテクストだ。このコンテクストこそが、この業界でのメジャーシーンであり、その中で闘っていくことの必要性が明確に意識されている。

 

3.「現代美術」と客観性

 芸術には「大衆芸術」と「純粋芸術」があり、現代美術は純粋芸術に属する、という。そして、そのことはつまり、顧客が大金持ちであるということを意味する。

 現代美術の業界で生きていくためには、まず具体的な顧客に向けた作品制作を意識しなければならない。さらに、ただ創るだけではなく、顧客に理解してもらう必要も生まれるのだ。

 ここで、日本における芸術家のイメージにはあまり馴染まないようなコミュニケーションやプレゼンの能力などが必要になってくる。

 

4.地を這う存在としての芸術家

「アーティストは、社会のヒエラルキーの中では最下層に位置する存在である。その自覚がなければ、この世界ではやっていけない」

 この文章で、本書の第一章は始まる。

 この国のアート業界を見渡した時に、根拠のない選民意識が創作の現場を築いていく上での妨げになっている、という。

 様々な「成功」のかたちがあるけれども、村上さんが歩いている道筋は、これからも多くの人たちと共有し得るインフラやモデルケースとしても機能する、ということはおそらく間違いないだろう。

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ研究。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
毎週月曜日に自宅ブックカフェやってます。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com

Share on Facebook
LINEで送る
Pocket