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この記事の所要時間: 322

1.本書の問題設定

 

容姿差別の現状分析とその対策について考える本だ。

本書の舞台はアメリカになっているが、ジェンダーバイアスがより意識の低いと考えられるこの日本においても、ここで描かれている諸問題を重ね合わせてみることもできる内容となっている。

国民の5分の1以上が基本的な医療サービスを受けられない状態にあるアメリカで、最も目ざましい成長を遂げている医療分野が美容であるのは何故なのか。この分野の患者の90%を女性が占めているのは何故なのか。現代の女性運動がさまざまな面で男女平等を勝ち取ってきたのに、容姿をめぐるダブルスタンダードについては成果があまり出ていないのは何故か。

本書が目指しているのは、容姿を必要以上に重視することで私たちがどれほどの代償を払っているかを明らかにして、これに関してどのようなアプローチができるかを探ることである。

 

2.メディアと消費文化の形成

 

文化人類学者マーガレット・ミードは、「欠陥は修正できるという可能性がひとたび生まれると、私たちの考え方が変わる。なにか手を下さなければならない、と思うのだ。なんでも、悪い点はなおすべきだと。」といっている。

メディアによって容姿における価値観が生成・流布され、科学技術と産業の発展によって、その価値観に合わせる形での「洗練」の方法が形成される。その「洗練」の努力をしないと、それは怠惰の証明のようなものとして機能したり、引け目を感じるようになってしまう。

消費者志向文化の興隆により、富の証としてだけでなく富の源泉として容姿の重要性が高まったのだ。

科学技術の進歩によって、確かに私たちの可能性は広がった。けれども、メディアは私たちの現状と理想との間のギャップを常に突き付ける。私たちの容姿は絶えずリフォームが必要な状態となっており、こぎれいな身なりはさまざまな商品の助けを借りなければ維持できないようになっている。

 

3.目標と対策

 

本書では紹介されているさまざまな調査から、容姿差別に対する改革に向けて3つの目標が示されている。

①より達成しやすく、より健康的で、より包括的な理想美を普及させること。

②容姿による差別と不名誉を減少させること。

③外見よりも健康を重視するライフスタイルを促進し、そのような生き方を支える社会を創ること。

このような目標への取り組みを促進するにあたって、容姿に関する法律からのアプローチがさまざまな役割を果たすことができるという。その役割は以下の二つだ。

①機会均等を促進し、その前に立ちはだかる容姿関連の偏見に対抗していくこと。

②個人の自由の尊重を発展させ、身だしなみ規定が人の中核的価値観の表現を制限する場合は、納得のいく説明を求めていくこと。

本書は容姿差別の対処として法制度の改革のできる可能性を重要視している。現在出来上がっている容姿をめぐるメディアや産業、それによって形成されてるシステムとそれによって生まれる差別は、自主規制くらいではもはやどうにもならないようになっている、ともいえるだろう。

【目次】

第一章●些末なことが大事なこと――女たちが支払っている代償

第二章●容姿の重要性と、ひとをマネる代償

第三章●美の追求は割に合う?

第四章●際限のない批判合戦

第五章●外見で人を判断するな――不当な差別

第六章●新しく作るか、あるものを使うか――法の枠組み

第七章●改革に向けての戦略

以上。

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ研究。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:http://insiderivers.com

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