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A shot at Shimokitazawa station

 

※本インタビューは、全体の3分の1くらいのダイジェスト版です。
フルバージョンは2013年4月28日発売の『未来回路5.0』に掲載予定。

 

−− 旅に求めるものって人それぞれですよね。例えば、遺跡であったり、冒険であったり、食べ物であったり。

kurato:僕はあまり冒険的な旅の仕方はしたことがないんですけれども、そういう旅をしている人は多いですよね。見ていると旅っていうものを、何か形にする自分なりの方法を模索しているっていう感じはあるのかなぁと思います。

 自分自身は旅の初期の頃から、お店を開いていずれは独立しようと考えていたのですが、そうなると当然、旅で経験してきたことの匂いがするお店が出来上がるだろうと思っていました。何故なら、色んなものを見て感じてきたら、自分が変わっているだろうし、その変わっている自分は他の人とは違うだろうし。だとしたら、それだけで空気感っていうのは何か変わるのかなと思って。だから例えば、チャリダーになるとかそういうことは僕にとって必要がなかったんですね。

 

−− どんな旅のスタイルが理想的だと思いますか?

kurato:どんな旅のやり方でも自分を見つめるっていう部分は共通しているのかなと思います。そういうのを求めていない人でも、旅に出たらすぐ分かるかなっていうか。例えば、30時間もバスに乗っていれば、やっぱり自分と向き合うことになると僕らは思っているんですよ。

 でも最近気になるのは、facebookとか常に更新している人が多いこと。自分がどれだけ豊かな生活をしてるのかっていう主張をしているような気がしちゃう。

 僕らは自分に向き合う時間が贅沢にあって、それでヨガをやる人だったり、何かを横断したりする人だったり。皆、そのような状況に身を置いていく。例えば、ヴィパッサナーみたいな瞑想でもいいし、どんな方法であれ自分と向き合うことが出来た時に、今までと違う自分を発見して、より素直により自然に生活が出来るようになっていく。

 そういうことが旅を通じて気付けることの大きなひとつだと思うんだけれども、それが最近は変わりつつあるのかもしれないですね。

 

−− そうですよね。すごくカジュアルな感じで。日本社会と接続されたまま旅に出る、というか。

kurato:そうですよね。ずっと線がくっ付いてますよね。

sachi:この間も今度南米に行くっていう子が「facebookをアップしていくので、それが途切れたら私に何かあったと思ってください」と言っていて。でも、私は「普通は途切れるものでしょ?」って思いましたね。

kurato:例えば、海外で困った時には現地からfacebookで僕に質問してきたり。常に繋がっている感覚。

sachi:折角、切り離されてやっと旅を感じられるのに。それはお店をやり始めてすごく疑問に感じているところです。

kurato:僕らが最初に旅に出た頃って、旅の話を聴ける人って周りにいなかったですよ。誰もいなくて。誰もいないけど、その場所に惹かれて足を運んだら、同じような仲間がそこにいて。情報交換が出来るし仲良くもなれて。それが今は、何かあったら日本にいる人を頼りにしているというか。

 僕自身はそういうしがらみを全部取って、完全にフリーになる為に結構苦労しながら旅立ったんですけれども。最近はその逆のことをしてるなっていう。ちょっとびっくりしちゃいますね。

 

−− 最近の旅行作家の方々も日本社会の延長線上として、旅を描いていく人が増えているように思います。

kurato:それだけ、孤独というものを求めていないということなのかな。現在、社会が不安定というか未来が見えない時代じゃないですか。だからこそ完全に独立するっていうことが本当に怖い。僕らの世代は「高度成長期があってバブルがあって」っていう時代で、いろいろ経済的な面でも落ち着く場所がまだまだあったのかなって。

 

−− 何とかなるだろうっていう心理的な余裕があった、と。

kurato:今、それがあまりないのかもしれないですね。それが「繋がる」っていう意識になってきているのかもしれない。特に震災後、そういう流れが大きかったと思うし。そういう意味では良いんだか悪いんだかなぁと思っていたけれども、なるべくしてなっているって部分はあるのかなと思いますね。

 

−− 特に大学生とかだと、旅に出て戻ってきた時に活かせる経験として旅してる感覚の影響もあるのかなぁと思います。

kurato:最近、大学生の旅サークルがいっぱいあるらしくて。チラシを置きにきたりとかイベントの告知とかに来たりするんだけれども、若い子たちがビビットに反応する部分としては、例えば、高橋歩さんとかの「好きなことをやれよ」っていうメッセージがあると思うんですよね。それが今の10代の子たちにとって何が好きなことに色々な選択肢があって、その中に「旅」っていうものがあったりとか。

 その次あたりにあるのが、たぶん自己表現というもののように思うんだよね。堅実性ということよりは、やっぱり「夢」っていう美しいものに目指していく。「夢」を追いかけるためにどーんと行くっていく印象を20歳くらいの子から受けたりする。まだ社会にまだ出てないから、ある意味、汚されていない。汚されてないから美しい「夢」に飛びついていくっていうスタイルなのかなと。だからすごく競争的に人が沢山集まる。そういう感じがあります。

 

−− 例えば、小林紀晴さんの『アジアン・ジャパニーズ』みたいな何となくふわっとした感じとか、日本に生きていて何となくなじめないとか違和感を感じるとか。そういうところから旅に出るって人たちは今、少なくなっているような印象を受けます。例えばニートや引きこもりの人たちが一時期のバックパッカーの中の勢力としてあったと思うことがあるのですが。それは家の中が充実しているってこともあるんでしょうけれども。

kurato:そうかもしれないですね。今は外に出なくなっちゃってるから、ニート的な人たちは。まぁ、昔のバックパッカーには普通にコミュニケーション能力の欠けた人も沢山いましたからね。

 

−− 今の若いバックパッカーたちはコミュニケーション能力がむしろ高い。

kurato:長けてますね。バックパッカーの総数が増えたことは間違いないと思います。世界一周ブログなんてのを見ると何千人っていう人数が今現在、世界一周してるし。それから考えると僕が世界一周していた頃と同じように一周した人って二、三人くらいしか会わなかったし。今、世界一周したら、たぶん100人以上に会うだろうし。それくらい変わってきている。バックパッカースタイルの旅が、「陰」じゃなくて「陽」になったっていうか。コミュニケーションを色々な人と取りながら色々な経験をして、それを何かに活かそうかなってくらい。やっぱり、後にビジネスまで活かそうとして旅してる人が多いようですね。

 

−− 旅って一般的には物理的な空間を移動することを言うと思うのですが、現在、定住していてこの場所で旅を続行している感覚ってありますか?

kurato:僕は今、ここに定点として立っているわけですけれども、前は自分がグルグル回っていたんですよね。それがこの下北沢っていう場所で急にパッと立ち止まった。だけど、ここに来る人が逆に周っているんですよね。むしろ、ここにいた方が出会いが多いんじゃないかって思えるくらい。世界で会った友達がここに会いにきたり、その人がもう1人連れてきたり。もしくは、旅にあまり関係のない人が何かこの空気感に惹かれてやってきて話をする。普通の飲食店ではありえないくらい僕らはお客さんとコミュニケーションを取っているんですよね。そもそも旅でのコミュニケーションを都会で実現しようかなっていうことで始まったカフェなので。それが普通にできているってことかなって思います。だから、ストレスを全然感じていないし、毎日が楽しい。だから、気持ち的には旅をしている時と何も変わっていないですね。

 だからよく旅をしてきて日本に帰ってきた友達が、お店に来て話した時に、「なんかあの時のものを忘れてないよね。」っていうようなことを言ってくれるんですよね。まぁ、このことなのかなって。

 「×」を付けない。普通は組織に入るとみんなと違うことにどちらかというと「×」を付けたがる。そういうのがちょっと働くんですけれども、「あっ、それもいいんじゃない?」とか「これもいいよね」とか。そういう許容範囲の広さって、結構、旅の中では日常茶飯事で。こういう都会でそういうのが同じようにあると、「その緩さ、いいね」っていう感じになる。たぶん僕は、一生そんな感じなんじゃないですかね。

 

−− 今後の展開について、何か企画していることはありますか?

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kurato:これは初期の段階から考えていたことなのだけれども、次は宿をやりたいと思っています。というのは、僕らが発信したいことや都会のカオスの中にオアシスを作りたいっていう気持ちでこの場所を持っていますけれども、やっぱり日本の自然の良い空間というかそういう場所で宿をやりたいと思っていまして。そこにはちょっと此処みたいにカフェを作ってみたり。そのカフェも地元の人たちが来れるような場所にしたい。そんな感じで僕らはその自然の中で宿をやりながら生活して、たまに下北沢に来る、と。

 そして、宿である以上、シーズンオフっていうのが存在しちゃうので、そのシーズンオフに世界を旅しようと。年の一ヶ月か二ヶ月、世界を周っていて、残りの10ヶ月くらいその宿にいて、月に一回か二ヶ月に1回くらい下北沢に来るっていう1年のサイクルで。そういうスタイルを最初のパッケージとして考えてスタートしたんですよ。その第一弾として、ここのカフェがスタートしたんですね。

(了)

 

【KURATO】
19歳の時に旅をはじめる。
30歳になって仕事を辞めて旅に出た。アジアから西へ西へ中東を越え、ヨーロッパへ渡り、お金が減ってきたんでロンドンで1年働いた。そしてアフリカへ南下して2000年のミレニアムを喜望峰で過ごした。南米に飛んで、今度はひたすら北上して北米を目指した。そしたら3年半が過ぎていた。それでも西へ行こうと太平洋を渡ったら、どこかで見た見慣れた風景があった。
気がついたらまたあの東京の街で俺達は友達の作った家に住むことになった。セトルダウンするつもりはなかった。またいつか行く為にどうしたらいいんだろう、、。独立しようと思った。そうだ!カフェをつくろう!
旅カフェ「Stay happy」http://cafestayhappy.com/

【SACHI】
大学4年の時、初めてヨーロッパを一人旅して旅の面白さを知る。就職先は決まってたけど、絶対3年以内に辞めてあてのない旅に出ようと決心。そうこうしてるうちに、今の旦那と知り合い「じゃ一緒に旅に出ようか」と言う事に。二人旅の面白さも知る。結婚したら旦那が「カフェをやりたい」と。