「届かなかったはずの声と再会するレッスン」、『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ 著)

この記事の所要時間: 28

この記事の所要時間: 約 2分8秒 自らの生い立ちや体験に、言葉というかたちを与えることは難しい。それがトラウマと密接に関係していれば尚更で、それゆえ、日常生活でそんな言葉たちに出会うことはそう多くない。この困難さは、向…

推すことの喜びと痛み、その切実さについて」、『推し、燃ゆ』(宇佐見りん 著)

この記事の所要時間: 153

この記事の所要時間: 約 1分53秒 人生に決められた意味などないことは、多くの人たちが生きていくなかで悟っていく。むしろ意味を与えていく過程が人生ともいえるわけだが、それでも、人が意味を求める生き物であることには変わり…

「この世は三十路女のための教科書を沢山つくってくれている」、『ピスタチオ』(梨木香歩 著) 評者:北原しずく

この記事の所要時間: 312

この記事の所要時間: 約 3分12秒  久々の梨木香歩さんの新刊。「西の魔女が死んだ」で有名な、優しい物語を紡ぐのが上手な作家さんのひとりです。  が、今回の梨木本はこわかったです。凄味があります。あらすじは書店に行って…

「アスファルト下の地面を呼び覚ます通路」、『幻年時代』(坂口恭平 著)

この記事の所要時間: 23

この記事の所要時間: 約 2分3秒 読み始めてすぐ、坂口恭平の友達である「タカちゃん」の存在に興味が湧いてくる。そのきっかけは彼がトカゲを飼っていた、というエピソードからだ。僕も子どもの頃にトカゲを飼っていた友達がいたの…

「もうひとつの『成熟』の物語」、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上 春樹 著)

この記事の所要時間: 26

この記事の所要時間: 約 2分6秒 「そのとき彼はようやくすべてを受け入れることができた。魂のいちばん底の部分で多崎つくるは理解した。人の心と人の心は調和だけで結び付いているのではない。それはむしろ傷と傷によって深く結び…

「〈詩的な時間〉の迷子」、『AMEBIC』(金原ひとみ 著) 評者:森下貴史

この記事の所要時間: 350

この記事の所要時間: 約 3分50秒  金原ひとみの小説はいつも主人公が「メンヘル系」で、日常生活の様々なことに悪態をつき、憧れの男性に夢中になり関係し別れるか別れないかして終わる。芥川賞を受賞したデビュー作『蛇にピアス…

「溺れることに溺れる」、『AMEBIC』(金原ひとみ 著) 評者:北原しずく

この記事の所要時間: 317

この記事の所要時間: 約 3分17秒  金原ひとみが芥川賞を獲ったインタビューで「まあ、適当に」などというコメントをしていたのを見たときの腹立ち様を、私はいまでも忘れない。何に対して腹が立ったのかというと、ろくに苦労もせ…

「本当に狂っている女の子とデブ」、『AMEBIC』(金原ひとみ 著) 評者:ユキちゃん

この記事の所要時間: 346

この記事の所要時間: 約 3分46秒  小説とは基本的に読者が主人公にどれだけ感情移入できるかが重要だと私は思っている。恋愛小説でもミステリー小説でも、まずは主人公の紹介から始まる。自由な時間をもてあました退屈な大学生、…

「文学らしい真っ当な〈汚れ〉」、『神様 2011』(川上弘美 著) 評者:赤木智弘

この記事の所要時間: 255

この記事の所要時間: 約 2分55秒  神様2011には「全く同じ」2つの物語が収録されている。  やたら他人に気を利かせる「くま」と「わたし」が、全く同じように散歩をする話だ。  「くま」という異物が、日常の中に入り込…

「ただ透明なテクノロジーだけが背後にぺたり、貼り付けられている」、『神様 2011』(川上弘美 著) 評者:時沢潤一

この記事の所要時間: 242

この記事の所要時間: 約 2分42秒  川上弘美の書く文章は簡潔でリズム感がある。村上春樹の書くそれよりも更に簡潔で、だから読み手は行間を埋めるように想像力や感受性が試される。そのスタイルが発揮された作品のひとつが『神様…

「かみさまは冷たくも優しくもない」、『神様 2011』(川上弘美 著) 評者:北原しずく

この記事の所要時間: 234

この記事の所要時間: 約 2分34秒  不安に晒されながら、それを当たり前のように覚悟し、いつか死ぬことを忘れて、素足に当たる太陽の暖かさ、通りすがる人の無神経さ、どこまでも変わっていってしまえる風景と、それに混じり溶け…

「終わらない〈日常〉と〈非日常〉、 二つの日常を散歩する」、『神様 2011』(川上弘美 著) 評者:中川康雄

この記事の所要時間: 245

この記事の所要時間: 約 2分45秒  「日常」と「非日常」との間に境界線を引くとしたら、判断基準のひとつとして環境への適応度合いを挙げることができるだろう。けれども、その基準で線を描こうとした時、その精度にこだわればこ…