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《80后・90后》中国ネット世代の実態 (角川SSC新書)

本書の著者であるTokyo pandaさんは、中国のネットでカリスマブロガーと呼ばれた日本人だ。

2006年に中国瀋陽の医科大学に進学し、在学中の2009年から中国のポータルサイトに自らのファッションやライフスタイルを紹介するブログ「TOKYO PANDA & MR.PANDA」を開設。それが中国で注目を浴びた。

そんな著者が日中関係の現状をみているにあたり、日本人が「リアル中国」を知ることの重要性と緊急性を感じているという。それが本書が書かれたモチベーションになっている。

ここでいう「リアル中国」とは、国家観や外交の駆け引き、イデオロギー、ナショナリズムというマクロ視点での中国ではなく、それとは反対に、生身の生活、日常、個人という身近な存在としての中国のことだ。

その「リアル中国」を知るためにインターネットは最適なツールである。特にここで対象になっている「80、90后(80、90年以降生まれの世代)」にその特徴は顕著だ。

政府系機関の中国インターネット情報センターの調査によると、中国のインターネット利用者は、2012年末で5億6400万人に上っている。その数は全人口の42、1%に相当している。つまり、現状においても日本の全人口の4倍近くがネットを利用しているということだ。さらにこの数は増加していくと考えられる。

中国においてインターネットというと、facebookやtwitterなどが規制されているようにあまり自由な「場」でないというイメージがある。けれども、そういったサービスの利用を規制しているのは確かだが、それに代わるかたちで中国独自のサービスが生まれ育っているのだ。

そこには多く人たちがコミュニケーションする「場」があり、沢山の趣味などのコミュニティ(中国ではそれを「群」と呼ぶ)などが存在している。もともと中国では何かを決定するに当たって、その信頼の担保を親しい人の「口コミ」に求めることが社会的な通念として根を下ろしている。その「口コミ」を流通させるツールとしてネットが活用されているのだ。そういった意味でも、中国の人々のネットへの親和性は日本より高い。

さらに、中国の中での流行や情報の速さについても言及されている。それを「中国でいう一ヶ月は日本でいう半年に匹敵するといっても過言ではない。」とまで表現しており、その凄まじい速さが想像される。

ここで描かれている「リアル中国」と僕たちが暮らしている「リアル日本」が活発に交流する「場」としてインターネット文化が育っていく。本書はそんな未来を思い浮かべるのに充分なほど、ライトでナチュラルな語り口で書かれている。

(了)

 

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ観察。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:https://insiderivers.com

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