この記事の所要時間: 24

3 Idiots [DVD] [Import]

本作品はインド工科大学ボンベイ校がモデルとなっていると思われる理系エリート大学の学生寮で出会った、ランチョー、ファラン、ラジューの3人を中心に描いた物語だ。学生時代の様々なエピソードと卒業以来行方不明になったランチョーを探す10年後の物語の二つが同時進行で描かれていく。

本作品は社会派のモチーフが多く盛り込まれているが、そこに見え隠れする社会問題をそれほどシリアスには描いてはいない。そのことは邦画版のタイトルになったセリフにも現れている。英語で「All is well.」。これが訛って「Aal izz well.」となる。

インドでは英語が国の準公用語として定められているのだが、その英語に関してのエピソードとして僕は聞いた話の中でとても印象に残っているものがある。それはある時、インド人とアメリカ人が口論をしていて、その口論の途中でインド人がアメリカ人に「あなたの英語は間違っている!」と言い放ったというものだ。このエピソードの真偽は分からないが、このエピソードはインドらしさの一面を的確に捉えている。

映画評論家の町山智浩さんは、本作に流れている「aal izz well」の空気感を日本の高度経済成長期における植木等の「そのうちなんとなるだろう」の空気感と重ね合わせて論じておられる。確かに同じ経済成長期ならではの共通点を見出すことも可能だろう。しかし、その共通点だけを挙げるだけでは本作品の魅力を伝えるにあたって充分ではない。何故ならば、この映画はもっと同時代性や差異を引き出すことができるはずで、もっと多様な魅力に溢れているからだ。日本から比べ数十年経てから経済成長期に入っている新興国の映画というイメージにこの作品の観方を押し留めてしまうと勿体ない。

インドには2度ほど訪れたことがあるが、ムンバイにはまだ一度も行ったことがない。いつの日か訪れた時、きっと僕はこの映画のことを思い出すのだろう。

 

YouTube Preview Image

(了)

 

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ観察。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:https://insiderivers.com

Popular Posts: