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 「食べる」ことは、僕たちがこの身体を形成し維持していく上で最も重要な行為のひとつだ。

 この「食べる行為」は様々な要因によって形作られている。例えば、食べ物の原材料は地産地消だけでなく国内だけでもなく海外からの輸入によって成り立っているものだし、「食べる行為」を形作る環境は経済・政治・歴史・文化と様々な影響の動的な複合体であるのだ。「食べる身体」にとって「食べる行為」というのは、ほとんど外的な要因によって形作られていると言っていい。

 岡崎藝術座の作品における人間は、「食べる行為」をする「生きた肉」のようにみえる。その「生きた肉」に宿る食欲、性欲、わけの分からない情動。「生きた肉」であるが故に、そこには善悪を基準にしたメッセージ性はないのだが、観客はその身体の言動を目の当たりにした時に芽生える感情によって、自らの中にある善悪の存在を知覚するに至る。

 「食べる行為」と「生きた肉」との間に発生する循環運動。それが人間が閉じ込められている環境ともいえるのだが、それが得体の知れない亡霊のような精神を人間という「生きた肉」に憑依させる。その精神の表象は、現在の僕たちの置かれた環境のそのものの姿でもあるのだ。そのあまりに大きく日常において後景化した環境の精神を、狭い劇場の中のたった数人で浮かび上がらせていた。

 それはある意味で呪術的な現場でもある。その憑依の現場を目撃することが、本作品を観ることの価値の1つであるだろう。

以上。

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「(飲めない⼈のための)ブラックコーヒー」(作・演出:神⾥雄⼤)

ミステリー、ダンス、シアター
アガサ・クリスティーの処⼥戯曲、「ブラック・コーヒー」をモチーフに、新たに書かれる台本。
処⼥を喪失したときの強い後悔と放⼼を、まやかしのしあわせで塗りたくってしまう。
おとこは処⼥を喪失したことがないので、想像とインタビューが⾏われるだろう。
俳優はからだを動かしまくり、裏では記憶が書き換えられる、暴⼒的なことば。
なにも混ぜてはならない……。

2013 年 6 ⽉ 14 ⽇(⾦)〜7 ⽉ 15 ⽇(⽉・祝)

東京:2013 年 6 ⽉ 14 ⽇(⾦)〜23 ⽇(⽇)@北品川フリースペース楽間
京都:2013 年 6 ⽉ 28 ⽇(⾦)〜30 ⽇(⽇)@KAIKA(imported to KAIKA)
熊本:2013 年 7 ⽉ 12 ⽇(⾦)・13 ⽇(⼟)@早川倉庫
⿅児島:2013 年 7 ⽉ 15 ⽇(⽉・祝)@e-terrace

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【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。コンテンツメーカー。表象・メディア論、及びコミュニティ観察。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:https://insiderivers.com

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