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この記事の所要時間: 312

謎の独立国家ソマリランド

1.非公認の平和な独立国家

 

世界最悪の治安状態と言われているソマリアは、現在、「ソマリランド」「プントランド」「南部ソマリア」という3つのエリアに分かれている。本書の主役であるソマリランドは、ソマリア半島の北部に位置している独立国家だが、国際的には国家として承認されていない。

国家として機能しているのにも関わらず国際的にはその存在が認められていないという謎の独立国家ソマリランドだが、その国は自力で内戦を終結させ、高度な民主主義による統治を行い、そして住民たちはその中で平和でのどかに暮らしているという。

 

2.内戦終結の秘訣

 

この国のすごいところのひとつは、戦争から和平まで全てを伝統の枠組みの中で対処しているというところであるという。もうちょっと具体的に言うと、「ヘール(掟)」に則って「へサーブ(精算)」を行っている、ということになる。「ヘザーブ」において重要なのは、何が原因なのかということではなく、人が何人殺されたとかラクダが何頭盗まれたかという具体的な「数」とされ、その「数」に対する「ヘザーブ」が「ヘール」に則って行われるのだ。

また、「ヘール」は契約のようなものでありそれに従う集団が氏族であるため、ここにおける血縁主義はフィクションであるといえる。言ってみれば、「ヘール」というミームを共有している集団ともいえるような存在が氏族なのだ。

ソマリアには3つのエリアがあると先ほど述べたが、何故、同じソマリ人であるのに、ソマリランドは手打ちができ、南部では手打ちができなかったのか。その大きな理由のひとつは、植民地時代における統治のあり方にある。

ソマリランドはイギリスの植民地であったがその方法は間接統治だった。つまり、長老や氏族の力をそのまま残したのだ。南部はイタリアの植民地だったが、現地の氏族の仕組みを壊し、イタリア人の移民を一万人以上送って、社会を変えてしまったという。

 

3.猛々しいニートの群れ

 

著者は、このソマリランドを「猛々しいライオンの秩序ある群れ」と例えているが、この奇跡の民主国家の財政基盤は、海外からの個人の「仕送り」。国際社会にも認められていないために援助も投資も来ないのだ。

そんな「仕送り生活」の中で覚醒作用のあるカートを齧りながら日々を暮らしている。今の日本の倫理観から普通に考えるとダメな感じである。

しかし、この「猛々しさ」と「仕送り生活」の両立による平和の維持という図式は、ある意味でもっと評価されてもいいのかもしれない。結果として、平和に暮らしていくことに成功していることは確かなのだから。

 

4.行政分野のリバース・イノベーション

 

著者はソマリランドの行政システムには西欧民主主義を超えているところがあるという。世界に誇るハイパー民主主義国家、ソマリランド。そこには氏族よる脈々と受け継がれ発展してきた伝統と西欧の政治システムのハイブリッドの姿がある。

この非公認の独立国家から学び取れることは多くある。500ページ以上に及ぶ本書でも、その一端を垣間見せたに過ぎないのであろう。

経済・産業の分野における新興国からのリバース・イノベーションの萌芽の話は最近よく聞かれるようになった。そしてそれは、行政システムなどの分野においてもこれから起こってくるのかもしれない。

以上。

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。コンテンツメーカー。表象・メディア論、及びコミュニティ観察。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:https://insiderivers.com

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