「現代文明を鮮やかに鳥瞰する」、『アンドレアス・グルスキー展』(国立新美術館)

この記事の所要時間: 150

f1a1ebb41bd0486f225e4a9b14802e1a

アンドレアス・グルスキー(Andreas Gursky)は、ドイツの写真家。2012年11月の作品「RehinⅡ」は430万ドルで落札され、写真作品として史上最高額が付いたことでも有名だ。先端技術産業やグローバル市場などといったモチーフをデジタル技術を駆使した画面構成で表現する作品で知られている。彼の作品には人類が位置している文明の現在形が鳥瞰されていると言っていいだろう。それは宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』の中の表現を借りるのならば、「ピラミッドのある世界」と呼ばれる風景でもある。

その風景は雄弁に肯定も否定もせず、ただ圧倒的な迫力をまとってそこに存在している。これらの作品に「工場萌え」と同じように「20世紀文明萌え」とも言えるような美しさとを読み取ることも可能だし、現代文明の風刺として捉えることも可能だろう。つまり、価値判断を差し挟むというよりはこの時代を象徴的な形で表現しているということなのだ。

グローバリゼーションや資本主義という言葉の響きは、普段は抽象的な概念のように感じられ生活から遠いものと感じられるかもしれない。しかし、そのように感じること自体が夢の中にいるような状態なのかもしれない。そんなことを「バンコク」という都市の川の水面を表現した連作を観ながらぼんやり考えた。それらの概念が現実を構成している個別要素の総体であることを、写真という技法を使用してこれほど明確に表現されていることにはやはり驚きを隠せない。

ーーー

ANDREAS GURSKY | アンドレアス・グルスキー展
会期:2013年7月3日〈水〉→9月16日〈月・祝〉
休館日:毎週火曜日
会場:国立新美術館 企画展示室1E
開館時間:10時〜18時 金曜日は20時まで
※入場は閉館の30分前まで

HP:https://gursky.jp/

ーーー

以上。

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
表象・メディア論、及びコミュニティ観察。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:https://insiderivers.com

Popular Posts:

Similar Posts:

    None Found

facebook comments:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です