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この記事の所要時間: 137

パラレルな知性 (犀の教室)

個々人の専門性への特化は、消費者へのサービス向上へとつながるものだ。当然、それ自体は否定されるものではないだろう。けれども、市民が専門家によるサービスの「受け手としてだけ」になると話は違ってくる。なぜならそれは、市民が受動的に、もっといえば、無能力になっていくのを推し進めていくことになるからだ。

その問題は近年、3.11などの出来事に対応することの出来ない狭義の専門家への懐疑などといった具体的な形になって、目の前に現れているといっていいだろう。そのような専門家への信頼に基づく「知」の在り方が成立しない事態が起こっている時、私たちはどのような「知」のあり方を再構成する必要があるのだろうか。本書では、「専門的知」と「市民的知」という2つの知性を有機的につなぐ必要性を説いている。

そのような「パラレルな知性」のあり方をどのように育てていくのか。それは「市民性」の成熟の前提として、問題解決のためのネットワークを編んでいく能力を置くこと。そして、ディベートではなくダイアログを基本としていくことである。本書ではそのために、「聴く力」「待つ力」を育てることから始めることが勧められている。

本書を読んで私が考えたのは、専門家の「やったもの勝ち」が成立しないような社会にしていくことが重要なのではないかということだ。「聴く力」「待つ力」を上手く機能させる上で、今の「やったもの勝ち」体質の社会をどのように捉え変化させていけばいいのか。それはとても根の深い問題だろう。なぜならこの問題は、ダイレクトにその社会を形成する上で根本的な「思想」の問題だからだ。

(了)

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
表象・メディア論、及びコミュニティ観察。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:https://insiderivers.com

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