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1.本の中での出会い
「読み手の想像力に結び付いたとき、たった一文字であってもとてつもない広大な世界を与えることだってできる。」(p.2)
本の中で特別な出来事を経験することがある。
それは、ただ本の中の物語に出会う、ということだけではない。そうではなく、もっと直接的な経験として、文字の世界が自分に干渉してくる瞬間があるのだ。
2.消費されない出版業
この本の舞台になっているミシマ社は、たぶん、もっとも理想的な出版社のひとつだと思われる。
なぜなら、ただ消費されるだけでない言葉たちを、意識的に丁寧にパッケージングして、世の中に放流している数少ない出版社だからだ。
もちろん他の出版社だって、丁寧に作ってはいる。けれども、大きな会社では、専門化し市井の人々の生活から遊離してしまう部分もあるのではないだろうか。
3.触感のある本を
生活の地に根を下ろし、触感のある本を。本書には、その試行錯誤の現場の息吹きを感じることができる。
そのような現場で、文字とそれを読む人々を繋ぐ仕事をすること。
それは、出版という行為を生業にするものにとって、アルファでありオメガのような気がしてならない。
(了)
【中川康雄(なかがわ・やすお)】
表象・メディア論、及びコミュニティ観察。インディーズメディア「未来回路」。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:https://insiderivers.com
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