個別の女の子のことが描かれているはずなのに、どうしてもそれが「世界」のことのように思えてしまう。いわゆる「セカイ系」というものは、「君と僕」の関係が家族や社会などを介在させず「世界」の運命と接続してしまう物語群をいうわけだから、岡崎京子の作品はその対極にあるとも言えるはずだ。なのに、多くある「セカイ系」の物語以上に、「世界」そのものを感じずにはいられない。
時代の変わり目だとかその世の中で、どのような反応が一人一人に訪れるのか。その痛みや快楽を描く中でみえてくるのは、果たしえない救済のようでもあった。いつまでたっても到来することのない大きな救いの不在の中で、生きることのパッションがそこにはある。特定の社会に生きながらも、それが刻印される身体を維持したまま、「社会」を超えた「世界」に常に接続され続けている。
決して満たされることのない、多くはお金に紐付けされた小さな救済の積み重ねで形作られる自分。しかし、その自分も微妙なバランスの上に成り立っている。それは他人の欲望にも同時に紐付けされているのだ。そのような日常は今も終わってはいない。つまり、岡崎京子の作品に感じとることのできる「エグさ」は思われている以上に一過性のものではないのだ。欲望や摩擦、それに付随する感情。その点において、はじめて「みんな」が存立しているのかもしれない。それは新宿駅西口の托鉢僧の鈴の音のように、現在進行形で今も鳴り響いているのだ。
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岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ
2015年1月24日(土)~3月31日(火)
世田谷文学館
会場:世田谷文学館2階展示室(東京都世田谷区南烏山1-10-10)
休館日:月曜日
料金:一般=800(640)円、高校・大学生、65歳以上=600(480)円、小・中学生=300(240)円、障害者手帳をお持ちの方=400(320)円 ※( )内は20名以上の団体料金
※「せたがやアーツカード」割引あり
※障害者手帳をお持ちの方の介添者(1名まで)は無料
主催:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷文学館
後援:世田谷区
助成:芸術文化振興基金
公式HP:https://www.setabun.or.jp/
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