本書は、はじめての中国におけるインターネットに関する通史だ。また、インターネット普及以前と以後で、「文化」がキチンとつながっていることも明らかにされている。そして、その通史が至る現在とは、西側のインターネットから生まれた世界的サービスからほぼ完全に別の生態系を築いた、もうひとつの巨大なネット空間の出現だ。
現在、中国のインターネット利用者数は6億人突破しているという。つまり、インターネット人口だけで、日本の総人口の約5倍にもなっているということだ。インターネットは中国の情勢を大きく変えている。けれどもその変化は、民主化を推し進めるものではなく、政府による検閲によって飼いならされた空間となっていることが、本書では指摘されている。
大陸の広い国土における情報戦において、インターネットは主戦場とも言える場所であろう。そしてその場所は、すでに国家による情報統制下にある。「Twitter」、「Facebook」、「Google」、「YouTube」といった民主化の広がりに寄与しそうなツールは、中国国内では遮断され正式には使用できない。そのかわりに同種の国内企業のサービスが使用されているわけだが、そこでの情報統制も徹底したものになっているという。
それは一種のディストピアすら彷彿とさせられる状況だ。しかし、その状況と同時に、その中で生きる人びとの自由な息づかいも本書からは感じとることができた。「上に政策があれば、下に対策あり」。それは国境線をも越えて、これからも続いていく「文化」なのだろう。例えば、日本での電化製品の「爆買」や、子どもを海外で生み育てるなども、そのような「文化」ともどこかでつながってるのかもしれない。そんな国内外での「ノイズ」が、如何にもうひとつの巨大なインターネット空間に介入し、変化を生み出していくのか。その未来にも関心を持つことができた。
講談社
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