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この記事の所要時間: 245

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

 半年くらい出遅れたがやっと読んだ。
 ネットで検索していると沢山の書評がアップされていて、その話題性の高さが伺える。

 1960年代のヒッピー文化、サイケデリック文化を代表するロックバンド「グレイトフル・デッド」の活動からマーケティングを学ぶというのが、本書の趣旨だ。その活動方法は、twitterやfacebookなどのある現在の情報環境でこそ有効に機能するのではないか、といったもの。言ってみれば、ヒッピー文化やドラック文化に親和性のある人たちにとっては「俺たちの時代が来たんじゃね!?」って感じだろうか。

 具体的にこの本で学ぶことは、以下の3つになるだろう。

1、ファンの作り方
2、中間業者の排除
3、広告コストを抑える

 ライブ音源などをファンに録音することをフリーにして(録音する人を「テーパー」と呼ぶ)、それが多くの人に流通していく。コンテンツを無料にすることで魅力のあるものならば勝手に広がっていき、結果的にファンが増えていく。

 コンテンツの流通をフリーにすることで、それ自体が効果的な広告となるのだ。それに触れた人々の一部がファンになり、さらにコアなファンになると、パッケージングされた商品やライブなどにお金を払うようになっていき、アーティストの生活も成り立っていくようになる。

 気になるのはファン層について。

 世の中にはいわゆるメジャーとインディーズと区分けがあるが、本書で語られている内容はインディーズの方に親和性が高いだろう。少なくとも現在では、この2つの区分けは客層の属性も反映している。例えば、最近メジャー感すら漂っているオタク文化圏ですら同人誌を購入する層は全体の中ではマイナーな層だろうし、本書でもグレイトフル・デッドのファンは変わり者を自認する人たちが多いことが語られてる。他の人と違うことが価値となり、ニッチなコミュニティが生まれるのだ。インディーズという枠は、そのようなマイナーであるからこそ価値があると考える層の需要を満たすポジションにある。そのファン数の少なさからくる経済的な問題は、中間業者や広告コストを省いているためにお金がダイレクトに彼らに届くことによって解決するというモデルケースが生まれている。

 現在、個人や小回りが利く小さな組織が時代の先端のような扱いをされることが多いが、本書もその潮流の中に位置するものだろう。その流れ自体は重要なものではあるが、一方で徐々に大規模な組織だからそこに出来ることについての議論も始まっている。ドラスティックなパラダイム・チェンジと考えるよりは、情報環境が変化し手法が多様化しているから、それを前提にマーケティングもカスタマイズしていかなければならない、ということになるだろうか。

 あと、ヒッピー文化などのオルタナティブカルチャーが様々なところをハッキングしているのを見かける今日、そのことの歴史的な背景や意味をそろそろ真面目に考えると有益な時期がきているのかもしれない。

 

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ研究。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
個人ブログ:https://insiderivers.com

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