この記事の所要時間: 223

評価経済社会 ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている

 最近よく耳にするし自分自身も適当に使っていた「評価経済」という概念をもう一度捉え直すためにちゃんと読んでみた。

 

 本書において、「貨幣経済」から「評価経済」への移行が生まれてきた背景には、電子メディアの登場があるとされている。

 つまり、電子メディアがマスメディアの特権だった「影響/評価システム」を一般市民に解放した、ということだ。それはまるで、農業の発展が部族長の特権だった食事の保証から個人を解放したり、産業革命が貴族の特権だった「芸術」「生活」を市民に解放したのと同じように。

 本書ではその解放の歴史を以下のような一文で書き表している。

「技術は権力者の特権を市民に解放する。」

 そのように解放された影響や評価の源が、これまでの貨幣の役割に代わっていくというのが評価経済社会論。評価経済社会での「評価」は「貨幣」に優先するように働くという。その例として、ソニーとアップルという企業を挙げてその違いと明暗を説明している。

 その新たな社会における「個人のふるまい」は3つの特徴がある。

①他人を、その価値観で判断すること
②価値観を共有する者同士がグループを形成すること
③個人の中で複数の価値観をコーディネートすること

 そして、それぞれのふるまいの動機となっているのは「自分の気持ちが一番」という価値観だ。貨幣経済社会では、何を買うかが最大の関心事となった。けれども、評価経済社会では豊富にある価値観や世界観、つまりイメージから何を選ぶかというのが最大関心事となる。

 と、評価経済について簡単に説明すると以上のようになる。

 

 今起こっている様々な社会現象を眺めていると、そこにうっすらと共通するバックグラウンドのようなものが見えてくる。この「評価経済」についてもそうだし、「シェア型消費」に関してもそうだし、坂口恭平さんの言う「態度経済」に関してもそうだ。反対に機能不全に陥っているものも見えてくる。

 一見バラバラに起こっているようにみえる出来事を繋ぎ合わせ「星座」を作っていくと、今がどのような時代なのか分かってくるのではないだろうか。もちろん、共時的にも通時的にも眺めていかなければならないのはいうまでもないけれども。ただ、未来を予測することがこれほど「今」を生きることに直結する時代も珍しいのではないかと思える。

 幾つものゲリラ戦が展開されていく中で、今、何が必要なものなのか、そろそろ答えが見えてきている頃ではないだろうか。

 

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ研究。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
個人ブログ:https://insiderivers.com

Popular Posts: