Share this...
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on Facebook
Facebook
この記事の所要時間: 51

0.本書のテーマ設定

 

本書は、おそらくソーシャルメディア界隈で最も大きな影響力を持つ人のひとりであろう、ジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介さんの著作だ。

本書を手にする前まで、私は紙の本で出すことはネットだけだと届きにくい層に届けるという目的もあるだろうから、津田さんの発行しているメルマガ『メディアの現場』やTwitterでのつぶやきをフォローしている人からすれば、ほぼ既視感のある内容なのかなーと思っていた。

けれども通読してみると、意外に結構新しい発見のある本だった。

しかし、テーマはまったくブレてはいない。
「情報技術を利用して政治を日常化し政策ベースの政治を実現する」こと。
それが本書のテーマである。

 

1.「政治」の持つ2つの側面、「政局」と「政策」

 

一般的に多くの人たちにとって「政治」という言葉からイメージされるのは、泥臭いおっさんたちの押し合いへし合いである。

何故そのようなイメージを持つのかというと、テレビや新聞、雑誌の多くがこの政局報道ばかりしているから。もちろん、それを求めているのはそれを観てる人とも言えるが、その結果引き起こされるのは、多くの人にとっての政治への無関心である。つまり、われわれは「無関心になっている」のではなく、メディアによって「無関心にさせられてきた」、という側面もあるのだ。というように、既存のメディアの「政治」の扱い方への批判もしている。

そして、ここで重要視されているのが「政局」ではない政治の側面、つまり「政策」である。

「政策」とは何か。ここではその定義を「政府や自治体がわれわれの生活をよりよくさせるためにつくったり、定めたりする方針」としている。

本書では、その「政策」にフォーカスし、新しい情報技術を使用することによって、政策決定過程の透明化や決定過程自体にどれだけ関与することができるのかを考察しているのだ。

 

2.今までの「活動家」の問題点

 

「社会を変える」、という志を持つ存在として「活動家」と呼ばれる人たちがいる。その人たちに対しても、これまでのやり方の問題点を指摘している。

津田さんは大学時代に選挙を手伝った時、いわゆる「活動家」たちの言葉や思想が、そのままの形ではなぜ世の中に届かないのかという疑問を持ったという。

そして、その足りないものの答えが最近わかったというのだ。
それは以下の2つであるという。

1、多くの人が「共感」するワーディング(言い回し)

2、その共感を下支えする「客観的データの裏付け」

如何にして世の中に届けるか。その方法を模索することを軽視する「活動家」は閉じたコミュニティを形成してしまう。そして、望んだ結果が得られない理由を、自分たち以外の一般の人たちや権力者のせいにすることに留めてしまう。

それでは、届く可能性のある主張も届かなくなってしまうのは当然のことであろう。

日本において、データジャーナリズムが社会運動の場で成立すること。それは、日本の「政治」にとって大きな出来事になるだろう。著者がネットメディアにおいて政治メディアを立ち上げようとしている理由もそこにあると考えられる。

 

3.新しい概念をシステムに組み込む

 

新しい情報技術に基づいた制度を導入するにあたり、それを言い表すコンセプトや言葉が必要になってくる。本書ではその概念の例として、東浩紀さんの「無意識民主主義」などが挙げられている。

なぜ、新しい概念が必要なのか。それは、概念を浸透させることが制度の正当性や理解度を上げることを助け、社会の中で新しい制度にフィットした考え方が定着することに繋がるからだ。

新しい制度には新しい思想を。

社会を変えていくには、制度と思想、その両輪を上手く回していくことが重要となってくる。

 

4.「動く」から「動かす」へ

 

今、私たちに必要なのは自ら変えていく経験、成功体験かもしれない。もうそのための道具はそろっているのだ。

従来の政治に関わることに対する無力感を如何に払拭していくのか。そのことが問われている。

60、70年代の「政治の時代」、局地戦においてはある程度の結果を残している(マイノリティ運動など)のだが、どうしてもその当時の社会運動では何も変わらなかったというイメージが世の中に蔓延している。そしてその後、まるで何事もなかったようにバブル景気が訪れ、やがて幻のように弾ける。その時、私たちの手には「政治」に対する無力感だけが残されていた。

しかし、インターネットのような情報技術が発達し一般化していく中で、新しい「政治」の可能性が芽生え始めているのだ。

津田さんは本書の中で、「もし、この本が夢見る未来が実現したら、世代間格差も、地域間格差も消え、市民の声がまんべんなく政治に反映される世界が到来する。」とまで言っている。「新しい民主主義」という夢。それが現実味を帯び始めている。

まだ、新たな情報環境の可能性を駆使した社会システムの構築は手探りの段階である。しかしこれは、遅かれ早かれ訪れる未来のはじまりなのだ。

そして、その未来が到来するスピードは、私たち一人一人にもかかっている。
もちろん、それは決して重苦しい負荷ではなく、それ自体が関わる人たちの生を豊かにするように構成されるものであることは、いうまでもないだろう。

【中川康雄(なかがわ・やすお)】
文化批評。表象・メディア論、及びコミュニティ研究。旅人属性。
インディーズメディア「未来回路」主宰。
毎週月曜日に自宅ブックカフェやってます。
Twitter:insiderivers
個人ブログ:https://insiderivers.com

Popular Posts:

Share this...
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on Facebook
Facebook